「事業は順調だけど、このまま続けるのはしんどい」
「後継者がいない…このまま終わらせてしまっていいのか?」
「できれば高く売って、次のステージへ進みたい」
そんなふうに考え始めたとき、知っておきたいのがM&Aによる事業の売却という選択肢です。
近年、従業員5人以下・年商1000万円前後の個人事業やスモールビジネスを売却するケースが増加しています。
「黒字なのに廃業」よりも、「信頼できる相手に引き継ぎ、報酬を得て次に進む」ほうが、事業にとっても、あなたにとってもメリットが大きいのです。
この記事では、M&Aで事業を売却するまでの流れ、成功するためのコツ、売却額を上げるための準備、注意すべきポイントなどを、初心者向けにわかりやすく解説します。
▼ M&Aによる事業売却とは?簡単に言うと「バトンを渡す」こと
M&Aによる売却とは、事業(または会社)を他者に譲渡し、その対価として売却金を得ることです。
「辞める=廃業」ではありません。
むしろ、顧客・従業員・仕入先・ノウハウなど、あなたが築いてきた価値を次世代に引き継ぐ行為です。
たとえば──
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個人経営のカフェを、移住希望の若者に売却
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夫婦で営んできたECサイトを、副業希望の会社員へ譲渡
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口コミで支持される整体院を、地元出身の後輩が引き継ぐ
このように、小さな事業でも“売れる時代”が来ているのです。
▼ どんなときに「売却」を考えるべき?
以下のようなタイミングで、M&Aを検討する経営者が増えています:
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年齢的・体力的にこれ以上の運営が難しい
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後継者がいない
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事業を始めて10年以上たち、一区切りをつけたい
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他のビジネスに注力したい/移住・転職したい
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家庭や健康の都合で、現場を離れたい
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売れるうちに現金化して、次の人生設計に備えたい
「まだ利益が出ている今が、売却のベストタイミング」というケースも多いのです。
▼ 売れる事業の特徴とは?
必ずしも「大きく稼いでいる会社」だけが売れるわけではありません。
実際に売却されているのは、以下のような事業です。
● 売却対象になりやすい事業例
業種 | 特徴 |
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飲食店 | 地域にファンがいる、設備が整っている |
ネットショップ | 受注フローが確立している、仕入れ先も引き継げる |
アフィリエイトサイト | 過去記事が収益を生んでいる、広告収入が安定している |
教室・塾 | 生徒が一定数いる、継続性のある契約がある |
整体・サロン | 常連客が多い、マニュアルが整備されている |
● 買い手が注目するポイント
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安定した売上・利益がある
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従業員や顧客が継続的に関わってくれる
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オーナーに依存しすぎていない(=引き継ぎしやすい)
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リスクが少ない(債務や訴訟リスクがない)
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伸びしろがあると感じさせる
▼ M&A売却までの流れ【初心者でもできる】
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目的と売却条件を明確にする
(希望金額、譲渡時期、譲渡後の関与の有無など) -
M&Aプラットフォームに登録・案件公開
→ TRANBI・BATONZ・M&A総研など
→ 匿名での掲載が可能。仲介型 or 自力マッチング型を選べます。 -
買い手とやり取り、面談・交渉
→ メッセージやZoomなどで詳細を伝え、意向確認 -
基本合意(LOI)を結ぶ
→ 金額・条件・スケジュールを整理 -
デューデリジェンス(買い手による調査)
→ 売上・費用・契約書・資産状況などを確認されます -
最終契約(譲渡契約)→ 事業引継ぎ
▼ 売却金額はいくらになる?相場の考え方
一般的に、年間利益(営業利益やオーナー報酬を含む)×1〜3倍が相場とされます。
ただし以下の要素で上下します:
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業種(ITやWeb系は高く評価されやすい)
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継続的な顧客がいるかどうか
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将来性(買い手から見て、伸ばせると判断されるか)
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オーナーが抜けても機能するか
◆ たとえば…
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年間営業利益が200万円ある飲食店 → 約200〜600万円の売却例あり
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月10万円の利益があるブログサイト → 約150万円で売却された例あり
▼ 売却金額を最大化するための準備
① 数字を見える化する(資料を整理)
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直近3年の売上・利益・経費の明細
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顧客リスト・契約書類・在庫リスト
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使用中のツール(会計、在庫管理、広告など)
→ 買い手が安心して買える状態を作ることが最重要です。
② 自分がいなくても回る状態に近づける
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マニュアル化、業務の属人性排除
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スタッフが主導できる体制にする
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顧客とのやりとりも仕組み化
→ 「引き継ぎに不安がない」と思わせることで、価格交渉でも有利に。
③ 集客チャネルや“伸びしろ”を見せる
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SNSフォロワー数やLINE登録者
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広告費対効果などの数字
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これからの可能性(エリア拡大・サービス追加など)
▼ 売却時の注意点
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**秘密保持契約(NDA)**を交わすこと
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買い手に安易に情報を開示しない
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契約前にお金を受け取らない
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引継ぎ後のクレーム防止のため、契約内容は明確に
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税理士・弁護士に相談する(税金・契約のリスク管理)
▼ 売却後の人生設計も考えておこう
売却後は、まとまった資金と、時間の余裕が手に入ります。
それをどう使うかはあなた次第。
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新しい事業を立ち上げる
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フリーランスや副業にシフトする
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一度ゆっくり休み、次を考える
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田舎に移住して小商いを始める
事業売却は“終わり”ではなく“次のスタート”です。
▼ よくある質問(Q&A)
Q:赤字でも売れる?
→ 売れる可能性はあります。「顧客」「スタッフ」「仕入れルート」など、“収益以外の価値”を評価される場合も。
Q:副業でやってる事業も売れる?
→ 売れます。むしろ「副業でこれだけ稼げるなら本業にしたい」と考える買い手も多いです。
Q:いくらくらいで売れる?価格は自分で決められる?
→ 希望価格は自分で設定可能。ただし、相場より高すぎると買い手が見つかりません。仲介業者に相談するのも手です。
Q:買い手が見つからない場合は?
→ 表示内容を見直す、売上を立て直す、価格交渉に柔軟になるなどの工夫が必要です。
▼ まとめ|事業売却は、誇りある「卒業の選択肢」
M&Aによる事業売却は、後ろ向きな撤退ではありません。
それは、**築き上げてきた価値を誰かに引き継ぎ、感謝とともに次の一歩を踏み出す“誇りある選択”**です。
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今の自分に合わない
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体力的に限界を感じる
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でも、ただ閉じるのはもったいない
そう感じているなら、今が動き出すタイミングかもしれません。
まずは、匿名で案件を登録するだけでも構いません。
誰かが、あなたの事業の“次の担い手”になってくれるかもしれません。