「そろそろ事業から身を引きたい」
「次の人生に進みたい」
「だけど、いきなり廃業するのはもったいない」
そう感じている方にこそ知っていただきたいのが、M&Aによる事業売却という選択肢です。
これは、事業を辞めるのではなく、“次の担い手”に価値ごと引き継いでもらう方法。
事業規模の大小にかかわらず、個人でも活用でき、しかも「廃業するよりも経済的メリットが大きい」ケースが増えています。
この記事では、**「個人でM&A売却を成功させるための戦略・準備・心構え」**を、初心者向けに徹底的に解説します。
「売れるかどうか不安」「何を準備すればいいの?」という方でも、読み終わる頃には明確なイメージが持てるはずです。
▼ なぜ今、M&Aで事業を売る人が増えているのか?
◆ 小さな事業でも売却対象になる時代に
かつてM&Aといえば、上場企業や数億規模の企業間の話でした。
しかし今では、従業員数人、年商500万〜1000万円ほどの個人事業でも普通に売却される時代になりました。
買い手側は、次のような層が中心です:
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地方移住して事業を持ちたい人
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サラリーマンを辞めて独立したい人
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副業で収益を持ちたい人
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親族以外に引き継いでもらいたい企業
この変化により、個人がM&A市場の売り手になるハードルは大幅に下がっています。
◆ 廃業との違い:「売る」ことで得られる3つの価値
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事業価値を“資金化”できる
→ 黒字事業なら、50万円〜数百万円の売却益も現実的 -
築いてきた関係・信用が次世代に活かされる
→ 顧客・従業員・地域との関係性が継続される -
気持ちの整理がつく“納得できる卒業”
→ 感謝されながら手放せる選択肢
▼ 売却前に絶対に整理しておくべき「5つの情報」
1. 収益構造と数字の見える化
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月ごとの売上、仕入れ、経費、利益(最低1〜2年分)
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売上の内訳(商品別・サービス別・チャネル別)
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顧客数・リピート率・客単価などのKPI
👉 数字が「正確に」「視覚的に」まとまっていると、信頼度が一気に上がります。
2. 契約・支払い・借入の明確化
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サブスク契約/顧問契約の有無と内容
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リースや借入の状況(残高、契約条件)
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家賃・人件費などの固定コスト一覧
👉 隠れた負債やリスクがあると、買い手は一気に警戒します。
3. 運営フローと“属人性”の排除
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毎日の業務を誰がどのように行っているか
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スタッフの役割分担・労働時間・給与
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自分しかできない業務があるかどうか
👉 「自分が抜けたら崩壊する」事業は、売れにくい=準備で属人性を下げましょう。
4. デジタル資産・販促チャネルの整理
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Webサイト/ブログ/SNSアカウント
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メルマガ/LINEリスト/会員システム
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デザイン・販促物・オンラインストア等
👉 これらが整っている事業は、買い手に「再現性」「成長性」があると評価されます。
5. 売却理由の“納得感”
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なぜ売却するのか?(健康上の理由/他事業への集中など)
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ネガティブな理由でも、誠実に説明する
👉 買い手は、事業だけでなく“人”も見ています。誠実さが最終的な決断に直結します。
▼ 売却価格はどう決まる?評価の仕組みを知ろう
◆ 売却額の算出方法(目安)
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営業利益 × 1〜3年分 +(引継ぎ資産の価値)= 売却額
例:年間営業利益が150万円 → 売却額150〜450万円程度
※ただし、下記要素で調整されます。
◆ プラス要因になるポイント
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顧客の継続率が高い(LTVが安定)
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スタッフの継続意向がある
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業務のマニュアル化・仕組み化ができている
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「成長余地」が明確に示せる
◆ マイナス要因になるポイント
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売上や利益が不安定(波が大きい)
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自分でしか対応できない業務が多い
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契約・債務の整理ができていない
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曖昧なまま進めて、後出しの情報が出てくる
👉 評価を下げないために「準備」が9割です。
▼ 「高く売る」ためにできる工夫10選
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写真・資料の見栄えを整える(事業パンフレット化)
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簡易的でも業務マニュアルを作る
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売上アップの“改善ポイント”を提案する
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SNSや販促物などの「資産」も含めてアピール
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オーナー抜け後も続く組織体制を明示する
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スタッフの継続同意を得ておく(口頭でも可)
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買い手が「やりやすそう」と思える魅せ方
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買収後の拡張戦略まで言語化してあげる
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契約・在庫・仕入先などの一覧表を作る
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「まずは相談だけでもOK」と柔らかく伝える
▼ 売却時の注意点・トラブル回避のポイント
● 契約前の情報共有に注意
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秘密保持契約(NDA)を交わす前に詳細を伝えすぎない
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複数の買い手がいても「同時進行」のルールを決めておく
● 「買い手が決まってから」の落とし穴
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金額条件ばかり見て“人”を見落とさない
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引継ぎ期間を曖昧にしたまま契約しない
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最後の最後に「やっぱり売らない」は信頼を損なう
👉 成功する売却は、「情報公開→交渉→引継ぎ」まで一貫して誠実な対応が鍵です。
▼ 売却後に考えるべき3つのこと
① 税金・経理処理
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譲渡所得の申告が必要(税理士と相談)
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消費税や契約にかかる費用の計算も忘れずに
② 心の整理と“次の目標”
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事業をやめた喪失感を抱く人は少なくない
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売却後の新しい挑戦、ゆとりある生活設計を考えておく
③ 売却後の“口出ししない覚悟”
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「自分のやり方と違う」と思っても、手放した以上は口出ししない
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信頼して任せることが、最も誠実な引継ぎです
▼ よくある質問(Q&A)
Q:年商300万円程度の個人事業でも売れますか?
→ はい。顧客が継続的にいて、黒字であれば十分売却対象になります。
Q:赤字でも売れることはある?
→ 設備・立地・Web資産・SNSアカウントなどに価値がある場合、売却事例はあります。
Q:店舗やサイトを閉じる前でも相談していい?
→ むしろ“動いているうち”が売却のチャンスです。止めてからでは価値が下がります。
Q:売却額はどう決まる?自分で決めていい?
→ 自由に設定できますが、希望額と市場相場にギャップがありすぎると買い手が付きません。客観的根拠を用意しましょう。
▼ まとめ|「閉じる」前に、まずは「売れるか」を考えてみてほしい
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体力的に限界を感じている
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もっと別のことにチャレンジしたい
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この事業を誰かに引き継いでほしい
そう思ったら、まず「売却」という選択肢を思い出してください。
あなたが築いてきたお店・サービス・お客さんとの関係は、誰かにとってのスタート地点になるかもしれません。
売却=手放すことではなく、
「受け渡すこと」であり、「未来につなげること」。
小さな事業でも、立派な価値を持っています。
今すぐ動かなくても構いません。
でも、今日から少しずつ「売る準備」を始めてみませんか?