2025年5月7日、住友商事株式会社(本社:東京都千代田区)は、
米国の在宅医療用品提供企業であるActivStyle, LLC(本社:ミネソタ州)の全株式を取得し、完全子会社化したと発表しました。
これは、同社が注力する北米ヘルスケア分野の基盤拡大の一環であり、
2025年4月には同分野で既に出資していたVast Medical Holdingsの株式を追加取得するなど、積極的な投資が続いています。
ActivStyle社の買収が意味するもの
ActivStyle社は、慢性疾患や高齢者の患者に対し、
医療保険適用の失禁ケア用品(紙おむつ、吸水下着など)を直接自宅に配送するDME(耐久医療機器)プロバイダーです。
保険会社や医療機関と密に連携し、患者に応じた最適な製品の提供・定期配送・保険手続きまでを一貫して支援するモデルが強みで、
米国全土に広がる顧客基盤を持っています。
今回の買収により、住友商事グループは同社を完全子会社化。
米国における在宅医療サポート市場でのプレゼンスを一気に高める形となりました。
Quest社との相乗効果を視野に
今回のM&Aと並行して注目されるのが、
住友商事が2024年に出資を行ったVast Medical Holdings(本社:フロリダ州)傘下のQuest社とのシナジーです。
Quest社は、主に糖尿病患者向けに在宅で使用する医療機器や関連サービスを展開。
両社とも医療保険と連携した事業モデルを持ち、
患者との継続的接点、カスタマイズされた在宅支援、保険請求対応までを一体化したビジネス構造が共通しています。
住友商事グループは、これらの企業の強みを融合させることで、
在宅医療領域におけるトータルサポートプラットフォームの構築を目指しており、
医療費削減と患者満足度の両立を可能にするビジネスモデルの展開を加速させる構えです。
住友商事グループのヘルスケア戦略の全体像
住友商事はもともと、日本国内では調剤薬局事業を通じて在宅医療サービスを提供しており、
また東南アジアではマネージドケア事業を展開するなど、地域ごとに医療制度やニーズに合わせた戦略を展開してきました。
今回のActivStyle社買収は、こうした地域分散型の戦略を北米でも本格的に展開する布石といえます。
さらに、米国市場での成功モデルを他の市場にも展開する「グローバル逆輸入」型の横展開も視野に入れており、
データ活用、ケアの個別最適化、医療費抑制といった社会課題への対応を、グローバルな視点で推し進める考えです。
今後の注目ポイント
- ActivStyle社とQuest社のシステム統合・物流ネットワーク連携により、スケールメリットをどう活かすか
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北米で構築されたDMEモデルの日本・ASEAN地域への転用
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在宅医療ビッグデータの活用による新サービス開発
といった点に注目が集まります。