「M&A」と聞くと、ソフトバンクや楽天のような大企業の買収劇をイメージする方も多いかもしれません。
でも今、M&Aは中小企業や個人事業主の間でも当たり前の手段になりつつあります。
実際に、日本国内でのM&A件数は年々増加しており、
最近では、売上1000万円未満の小さな店舗やWeb事業、ECサイトまで売買の対象になっています。
この記事では、これからM&Aを検討したい方に向けて、
M&Aの基本的な仕組み・進め方・メリットとデメリット・用語・注意点まで、やさしく解説します。
▼ そもそもM&Aとは何か?
◆ M&Aの意味
M&Aとは、「Merger(合併) and Acquisition(買収)」の略。
企業や事業の“合併・買収・譲渡”などを指します。
ただし、実際の日本国内M&Aの多くは「事業譲渡」や「株式譲渡」など、一部または全部を引き継ぐ形式です。
◆ M&Aの主なパターン
種類 | 概要 |
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事業譲渡 | 店舗・人材・ノウハウなど、事業の一部を譲渡(契約で範囲を定義) |
株式譲渡 | 会社の株式を譲渡して、経営権ごと渡す(法人単位) |
合併 | 2つ以上の会社が1つになる(吸収合併・新設合併など) |
会社分割 | 一部の事業を切り出して他の会社に渡す |
事業提携・資本提携 | 出資や協力関係を築くが経営権は移らない |
▼ M&Aの基本的な流れ(6ステップ)
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目的の明確化(売る?買う?なぜ?)
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相手探し(仲介会社・マッチング・紹介など)
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秘密保持契約(NDA)締結
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基本条件のすり合わせ・事業調査(デューデリジェンス)
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譲渡契約の締結
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引継ぎ・決済・運営開始
※小規模案件では2〜3ヶ月、大型案件では半年〜1年以上かかる場合もあります。
▼ M&Aのメリット(売り手・買い手別)
◉ 売り手のメリット
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廃業せずに“価値”を残せる
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従業員や顧客との関係性を守れる
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廃業コスト(撤去費、違約金など)を回避できる
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副収入や老後資金として売却益を得られる
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“感謝されながら引退できる”ことも多い
◉ 買い手のメリット
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顧客・売上・スタッフごと引き継げる
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ゼロから起業するより早く・低リスクで事業展開できる
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すでに仕組み化されている事業を伸ばせる
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ブランディングやレビューをそのまま活用できる
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新規事業としてのテストコストを削減できる
▼ M&Aの注意点・デメリット
◆ 売り手のリスク
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適正価格で売れないことがある(情報不足・焦り)
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引継ぎ後にトラブルが発生する可能性(顧客・スタッフ)
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売却後も責任が残る場合あり(のれんや契約条件次第)
◆ 買い手のリスク
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数字の信頼性がない(不正・記録不足)
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顧客が離れてしまう
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契約や人材が“属人化”している
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実態が不透明だと引き継ぎが困難に
▼ M&Aでよく使われる用語解説
用語 | 意味 |
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譲渡価格 | 会社や事業を売る際の価格(交渉で決定) |
デューデリジェンス(DD) | 財務・法務・業務の調査 |
EBITDA | 営業利益+減価償却費。評価の基準に使われる |
のれん | 譲渡価格と資産価値の差。ブランド・顧客などの無形価値 |
エスクロー | 第三者が一時的に資金を預かり安全に取引する制度 |
▼ 売却価格はどう決まるの?
基本的な考え方は以下の通りです:
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利益ベース(営業利益×1〜3年分)
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資産ベース(在庫・設備・Web資産など)
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将来性・ブランド力・人材など無形価値も加味
小規模事業(飲食・サロン・ECなど)では、売却価格が50万〜1000万円前後が多い傾向です。
▼ M&Aの成功に必要な準備
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売上・利益・契約書・従業員情報の整理
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事業の“属人性”を排除(自分がいなくても回るか)
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事業の魅力・将来性をプレゼンできる資料を用意
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買い手に安心感を与える数字・仕組み・証拠の可視化
▼ よくある質問(Q&A)
Q:赤字事業でも売れますか?
→ 売れます。立地・設備・顧客・Web資産など、黒字以外の価値が評価されることがあります。
Q:個人事業主でもM&Aは可能?
→ はい。法人でなくても「事業譲渡」という形で売却・買収が可能です。
Q:M&A仲介会社は使うべき?
→ 小規模案件ならマッチングサイトで十分。価格交渉・契約が不安なら仲介がおすすめ。
Q:スタッフや顧客にどう伝える?
→ 契約確定後、適切なタイミングで段階的に伝えるのがベストです。
▼ まとめ|M&Aは「やめる」でも「奪う」でもなく、「引き継ぐ」手段
M&Aは、単なる売り買いではなく、「想い」「信用」「努力の結晶」を次の世代へつなぐ行為です。
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経営に限界を感じている人
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独立・事業拡大の機会を探している人
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新しい形で事業と向き合いたい人
そんな人たちが、自分らしい選択をするための手段が「M&A」です。
事業をやめる前に。ゼロから始める前に。
M&Aという可能性を、一度真剣に考えてみてはいかがでしょうか?