「そろそろ体力的にも限界かもしれない」
「でも、この店を愛してくれる常連さんがいる」
「閉店は避けたい。誰かに引き継げないだろうか…」
そんなときに選ばれているのが、M&A(事業売却)という選択肢です。
いまや飲食業界でも、M&Aは大企業のものではなく、個人経営や小規模店舗でも十分に活用できるリアルな手段になりました。
本記事では、「飲食店を手放したい」「閉店ではなく次に託したい」と考えるオーナーに向けて、
M&Aの基本知識、売却価格の決まり方、成功事例、具体的な手順、売れる店の共通点まで徹底解説します。
小規模飲食店でもM&Aが成立する時代に
なぜ“売れる”のか?
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初期投資を抑えたい買い手が増えている
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飲食未経験者が“運営済の店舗”を求めている
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「立地」「設備」「集客ベース」がある店は非常に魅力的
特にコロナ明けの今、飲食を始めたいけれどリスクを最小限に抑えたいというニーズは年々高まっています。
飲食店のM&Aで売却されやすいパターンとは?
特徴 | 解説 |
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地元での認知度がある | 常連・口コミ・SNSなど地域密着型の強み |
小規模・個性派 | コンセプトや内装の再活用が可能 |
簡易な業態(カフェ、バーなど) | 買い手が挑戦しやすく、初期運営に向いている |
許認可が整っている | 食品営業許可などをすぐに引き継げる店舗は魅力的 |
売却価格はどうやって決まる?
主に下記の3要素で決まります。
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営業利益(過去12〜36ヶ月)
→ 1年分の利益 × 1〜2年が目安 -
資産価値(内装・厨房機器・什器備品など)
→ 中古評価額+原価帳簿などで算定 -
無形資産(顧客、ブランド、SNSなど)
→ Googleレビュー・インスタフォロワー数・LINEリストなどが加点対象
実際の成功事例(2選)
事例①:赤字カフェを“地域密着リブランディング”で売却
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営業年数:5年
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月商:60万円(利益ほぼゼロ)
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買収価格:150万円
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特徴:ナチュラル系内装・備品一式付き・Instagramアカウントフォロワー4,000人
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買い手は女性起業家。内装を活かしつつメニュー変更で黒字化
事例②:深夜バーを朝カフェに転換
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営業年数:8年
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月商:100万円前後(黒字)
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売却価格:400万円
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引継ぎ後、オーナーが完全引退し、設備・レシピ・スタッフも継承
飲食店を高く売るための準備リスト
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営業数字の整理(最低1年分)
→ 月商・原価率・人件費・家賃・営業利益 -
設備一覧の作成(購入時期・型番・動作状況)
→ 高価な厨房機器は価値がつきやすい -
スタッフ状況の整理
→ 継続雇用可能か、引継ぎ期間の条件も記載 -
SNS・レビュー・写真素材の整備
→ 店舗のブランディング価値として評価される -
“属人性”の排除
→ 「オーナーの魅力」だけで回っている店は売れにくい
M&Aの進め方(ステップ)
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目的整理:「完全引退?副業との両立?他事業に注力?」
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M&A仲介/マッチングサービスへ登録
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匿名での掲載&買い手とのやり取り
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条件調整(価格・引継ぎ内容) → 基本合意
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契約締結 → 引継ぎサポート → 完了
よくある質問(Q&A)
Q:赤字でも売れる?
→ はい。赤字でも「内装・立地・コンセプト・仕組み」が魅力的なら買い手は付きます。
Q:スタッフやお客さんにいつ伝える?
→ 契約直前または契約後に段階的に伝えるのが一般的です。
Q:自己資金がなくても買いたい人はいる?
→ はい。金融公庫や事業承継支援融資を活用する人もいます。
まとめ|「閉める」より「託す」時代へ
飲食店の経営は、料理や接客だけでなく、「続けること」そのものが一つの仕事です。
でも、続けることが難しくなったとき、
その努力を「消す」のではなく「託す」ことができる時代になりました。
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最後に売上を立ててから引退したい
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お客様とスタッフの居場所を残したい
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自分の代で終わらせたくない
そんな思いを形にできるのが、M&Aという手段です。
「この店に、もう一度、別の人生を歩ませたい」
そう思ったときが、M&Aを考えるタイミングかもしれません。