-
事業は安定しているが、そろそろ引退したい
-
後継者がいない
-
職員や利用者を守りながら、できるだけ円満に撤退したい
そんな介護事業所経営者にいま選ばれているのが、M&A(事業売却)による“引き継ぎ”という選択肢です。
「介護施設を売る」というと、聞き慣れないかもしれませんが、実際には年間数百件規模でM&Aが行われており、特に地域密着型の小規模デイサービスや訪問介護事業所が多く成立しています。
この記事では、中小規模の介護事業所を経営している方に向けて、M&Aの基礎知識、実際の売却事例、進め方、売却に強い施設の特徴を網羅的に解説します。
なぜ、今“介護施設のM&A”が当たり前になりつつあるのか?
高齢化 × 介護人材不足 → 継承ニーズの高まり
-
経営者の高齢化が進み「後継者がいない」ケースが急増
-
一方で、新規参入希望者は制度・人材・設備のハードルが高く苦戦中
-
すでに運営が安定している事業所を“引き継いで始めたい”という買い手が増加
実は“小規模”の方が売りやすいことも
-
地域密着・稼働率が高い施設は買い手にとって安心材料
-
固定費が抑えられていて収益構造がシンプル
-
現場職員が残る場合は“即戦力型M&A”として評価されやすい
M&Aで売れる主な介護事業の種類
種別 | 説明 |
---|---|
通所介護(デイサービス) | 送迎・リハビリ・入浴・レクなど地域密着型が多い |
訪問介護 | 登録型のホームヘルパー事業(身体介護・生活援助など) |
居宅介護支援(ケアマネ事業所) | ケアプラン作成事業。連携重視される業態 |
小規模多機能・グループホーム | 設備が必要な分、稼働率・スタッフが鍵に |
放課後等デイサービス | 障害福祉分野でニーズ拡大中。規制チェックが重要 |
実際の売却成功事例(2選)
事例①:地域密着のデイサービス(定員10名)を売却
-
売却価格:700万円
-
年間営業利益:約300万円
-
特徴:職員5名在籍・送迎車2台・利用者稼働率80%以上
-
買い手:同市内で拡大を狙う若手経営者。事業所名と職員は継続
事例②:訪問介護ステーションを法人ごと譲渡
-
売却価格:1,200万円
-
顧客数:60名以上、登録ヘルパー15名
-
買い手:障害福祉事業を運営していた法人が多角化目的で買収
介護事業所M&Aの相場と売却価格の決まり方
評価要素 | 内容 |
---|---|
利益(営業利益) | 1〜2年分が目安(例:年利300万 → 売却価格300〜600万) |
固定資産 | 車両、備品、建物(賃貸・所有)など |
稼働率 | 利用者の平均数、定員に対する比率 |
職員構成 | 継続勤務の可能性、資格保有者の有無 |
指定許認可 | 介護保険事業所番号、更新状況や行政評価など |
売却の進め方|ステップで解説
-
目的と希望条件を明確に
(完全引退?一定期間の顧問残留?施設名の継続は希望?) -
必要書類・情報の整理
(決算書、利用者数、稼働実績、職員構成、行政報告など) -
M&A仲介会社やマッチングサイトへの掲載
※TRANBI、Batonzなど介護業専門の案件も多数 -
買い手との交渉・現地見学・条件調整
-
基本合意 → 契約締結 → 引き継ぎ期間
よくある不安とその対応
Q:従業員にはいつ伝えるべき?
→ 基本的には「契約確定後」に段階的に伝えるのが一般的。混乱を避けるため。
Q:利用者への影響は?
→ 施設名や運営方針を引き継げば、ほとんどの利用者は継続します。
Q:行政への報告は必要?
→ はい。介護保険法に基づく「指定の変更」や「名義変更」手続きが必要。仲介会社や行政書士の支援が有効。
高く売れる介護事業所の共通点
-
定員に対して稼働率が70%以上
-
職員の勤続年数が長く、離職率が低い
-
帳簿や報告資料が整っている(実績証明)
-
行政評価で問題がない(監査指摘なし)
-
近隣の介護需要が高く、立地が好条件
まとめ|「介護の想い」は“売って終わり”ではなく、“引き継いで続く”
事業承継は単なる「終わり」ではありません。
M&Aという選択肢は、これまで守ってきた“利用者・職員・地域のための場所”を未来へつなぐ手段です。
-
後継者がいない
-
廃業はしたくない
-
でも、自分にはもう続ける余力がない
そんなときこそ、M&Aを前向きに検討してみてください。
あなたの介護施設の価値を、次の世代が受け継いでくれるかもしれません。