米国鉄鋼大手との“歴史的統合”が正式成立へ
2025年6月18日、日本製鉄株式会社(5401)は、
米国の大手鉄鋼メーカー・United States Steel Corporation(以下:USスチール)の全株式(226,576,075株)を取得し、
買収が正式に成立したことを発表した。
買収は、日本製鉄の米国子会社である Nippon Steel North America, Inc. を通じて実施され、
総額は約142億米ドル(約2兆2,000億円)規模にのぼる。
国家安全保障協定を含む買収スキーム
本買収は、単なるM&Aに留まらず、米国政府との間で国家安全保障協定(National Security Agreement)を締結し、
米政府に「黄金株(ゴールデン・シェア)」1株を発行することも盛り込まれた。
これにより、米国政府がUSスチールの重要決定に対して一定の拒否権(Veto権)を持つ構造が導入され、
国家安全保障上の懸念にも対応した特殊な買収となっている。
買収の目的と狙い
日本製鉄がUSスチールを傘下に収めることで、以下のような戦略的意義がある:
1. 米国市場における基盤強化
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日本製鉄にとって米国は成長市場。
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USスチールの持つ製造拠点と顧客基盤を取り込むことで、北米戦略を加速。
2. 世界有数の製鉄能力の確保
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合算で粗鋼生産能力は1億トン規模へ。
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グローバル競争で中国勢やアルセロール・ミッタルに対抗。
3. 雇用維持と地元貢献で反発回避
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約10万人超の雇用を維持・創出する大規模な設備投資計画を米国内で推進。
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買収への政治的反発を和らげるメッセージとして機能。
■ 業界インパクトと今後の展開
この買収は、日本企業による米国製造業の中核企業買収としては過去最大級であり、世界の鉄鋼再編における大きなマイルストーンとなる。
一方で、今後は以下のような課題も注目される:
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統合後のガバナンス体制構築と現地経営の自律性維持
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米国の保護主義的な政策動向との整合
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労働組合や現地ステークホルダーとの連携強化
■ 買収概要
項目 | 内容 |
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対象企業 | United States Steel Corporation(USスチール) |
買収主体 | 日本製鉄(完全子会社Nippon Steel North America経由) |
買収株数 | 226,576,075株(100%) |
買収金額 | 約142億米ドル |
国家安全保障対応 | 黄金株1株を米国政府に発行 |
雇用維持・創出 | 10万人超(予定) |
編集部コメント
「製鉄業の再編が世界規模で進む中、日本製鉄が打った“最大の一手”。単なるM&Aではなく、安全保障と雇用政策を包含した“地政学的経済連携”として今後のモデルケースになり得る。」