「どうせ売るなら高く売りたい」と思うのは当然です近年、中小企業や個人事業主の間でも、**M&A(事業売却)**という選択肢が広がりつつあります。
「どうせ売るなら高く売りたい」と思うのは当然です。
しかし、いざ事業を売ろうとすると、多くの方がこう思います。
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「この事業っていくらで売れるの?」
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「そもそも価値あるの?」
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「できれば、もっと高く売りたい…」
そう、事業売却では**“バリュエーション(企業価値評価)”がすべてのスタートライン**です。
そして実は、このバリュエーションは、工夫次第で高めることが可能です。
本記事では、実務的かつ現場でよく使われている視点をもとに、事業を高く売るための5つのバリュエーション向上策を具体的に解説します。
そもそもバリュエーションとは?
M&Aにおける**バリュエーション(Valuation)**とは、企業や事業の「価値評価」のこと。
売却価格を決定する際の基準として使われます。
代表的な算出方法には以下のようなものがあります:
評価方法 | 概要 |
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時価純資産法 | 純資産ベースで評価。清算価値に近い。 |
DCF法 | 将来の利益予測を割り引いて現在価値に換算。 |
マルチプル法(EBITDA倍率など) | 同業他社の取引倍率などを参考にする。 |
類似案件比較法 | 過去のM&A事例から価格を推定する。 |
つまり、「現状の利益」や「今後の成長性」が価値に直結するということです。
バリュエーションを上げる5つの方法
①「数字の見える化」で信頼感を上げる
どれだけ立派な事業でも、売上や利益が不明確な状態では評価されません。
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月次の売上・利益の推移
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取引先ごとの売上構成比
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固定費と変動費の内訳
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在庫・負債の状況
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顧客リストやLTV(顧客生涯価値)
といった情報を、エクセルや会計データなどで整理し、第三者が見ても理解できる状態にしておきましょう。
ポイント:
数字が整っていないと、最悪の場合「ゼロ円査定」になることもあります。
② 利益を“見せる”意識を持つ(PLの整形)
買い手が重視するのは、**“利益”**です。
しかし中小企業では、節税目的で利益を抑えているケースが多く、本来の稼ぐ力が見えにくくなっています。
例:
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代表の交際費や私用車のリース費用
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社長の役員報酬が相場より高い
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一時的な広告・設備費で当期赤字
こうした費用は「調整後利益(実質利益)」として再算定されることが多いですが、あらかじめ“どれが調整対象か”を明記しておくと、バリュエーションの説得力が増します。
ポイント:
3期分の損益計算書を、調整後ベースで用意できると有利です。
③ 「仕組み化」された事業にする
買い手は、「社長がいなくなっても回るか?」を必ずチェックします。
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オペレーションマニュアルの有無
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従業員の自律性や離職率
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標準化された営業プロセス
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自動化された集客チャネル(広告、SNS、SEOなど)
つまり、“仕組み”がある事業は、**「引き継ぎやすい=価値が高い」**と見なされます。
ポイント:
属人的な業務ばかりの事業は、買い手がつきにくく、バリュエーションが大幅に下がります。
④ 「ストック型収益」があると評価が跳ね上がる
ストック型(継続課金)モデルは、安定した利益が見込めるため、買い手からの評価が非常に高いです。
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サブスクリプション(月額課金)
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保守契約・管理契約
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継続コンサル・顧問契約
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リピート率が高い固定客構成
逆に、フロー型(都度完結型)の収益モデルは、将来の収益の予測が難しく、評価はやや落ちます。
ポイント:
ストック型を導入できる余地があるなら、売却前に設計しておくのが理想です。
⑤ 「買い手にとってのメリット」を明文化する
買収とは、「売りたい人」ではなく「買いたい人」がいてはじめて成立します。
そのため、買い手の“目的”にマッチするように、自社の売りポイントを言語化することが大切です。
例:
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同業他社にとってはシェア拡大
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異業種にとっては新規事業参入の足がかり
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人材不足の企業にとっては即戦力チームの獲得
単に「売上がこれだけある」ではなく、「この会社を買うとこういうメリットがある」と資料にまとめておくと、価格交渉でも主導権が握れます。
注意:すぐに売らない場合でも“準備”は今から始めるべき
M&Aで高値売却を狙うなら、最低でも1年〜2年前から準備を進めておくのが理想です。
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数字の整備(財務資料・利益改善)
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体制の仕組み化
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買い手にとって魅力的な要素の育成
これらは“事業の健康診断”とも言えます。
準備を怠れば、「売れない」「買い叩かれる」「交渉が破綻する」などのリスクもあるため注意が必要です。
まとめ|“高く売れる会社”には共通点がある
事業を高く売るには、以下の5つが鍵になります。
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数字を整え、見える化する
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調整後利益で“実力”を見せる
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仕組み化・非属人化された運営体制
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ストック型ビジネスモデル
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買い手視点の魅力を明文化する
売却は“ゴール”ではなく、“戦略的な出口”です。
正しく準備をすれば、会社はもっと高く売れます。
そして、その売却益があなたの次の挑戦の資金源にもなり得るのです。