M&Aは高齢者だけのものじゃない|30代でも会社を売買する時代の実態

「M&A=引退する社長のもの」というのは、もう古い。

「M&A」と聞くと、こんなイメージを持っていませんか?

  • 高齢社長が後継ぎもいないまま会社を売却

  • 地元の老舗企業が事業承継のために買われる

  • 何十年も経営してきた企業の“終わり方”

確かに、これまでのM&Aは「引退・事業承継」が主な目的でした。
しかし近年、30代・40代でも“会社を売る”選択をする経営者が急増しています

それだけでなく、起業5年以内・社員5名以下・年商3,000万円といった“小さな会社”の売買も増えています。

なぜ今、若い世代のM&Aが加速しているのか?
本記事では、そのリアルな背景とメリット・リスクを徹底解説します。


データで見る「若手経営者のM&A増加」

経済産業省の調査によると、M&A成約件数は年々増加中。
特に注目すべきは、**売り手側の“年齢の低下”と“事業規模の縮小”**です。

  • 売却企業のうち、40代以下の割合がここ5年で2倍近くに

  • 社員数10名以下・年商5,000万円未満の事業売却も急増

  • 起業3〜5年以内での「戦略的売却」が一般化

つまり、M&Aはもはや**“リタイア手段”ではなく、“戦略的な事業の出口”**として、若手にも活用されているのです。

LINE追加

なぜ30代で会社を売却するのか?

① 他事業に集中したい

起業して数年、「軌道には乗ったけど、本当にやりたいことではない」と気づくケースも。
売却益をもとに、新たな事業へピボットする流れが増えています。

② スタートアップ文化の影響

「Exit(売却)ありきで会社を成長させる」発想が、若手起業家の間で浸透。
特にIT・SaaS・D2C系では、数年で売却するのが前提のモデルも多いです。

③ 副業・複業の拡大

個人事業から法人化したが、本業との兼ね合いで継続が難しくなるケースも。
赤字でなくとも、“売れるうちに売る”選択をとる人が増加中。

④ メンタル・ライフプランの変化

30代はライフイベントも多く、
「子育てに集中したい」「心身の限界」などから事業を譲ることで生活バランスを取り直す動きも見られます。


若手による“売却”のリアル事例

事例①:Web制作会社(32歳経営者)

  • 社員:2名

  • 年商:1,800万円

  • 売却理由:動画事業にピボットしたいため

  • 売却価格:約400万円+成果報酬

→ ノウハウと既存クライアント、スタッフも引き継がれ、買い手も同業だったためスムーズに移行。


事例②:オリジナル化粧品EC事業(35歳女性)

  • 年商:2,200万円(粗利率60%)

  • 売却理由:育児と介護が重なり時間確保が困難に

  • 売却価格:約500万円+在庫別途精算

→ 購入者は法人のD2C事業者。自社製品としてブランド継続し、本人はアドバイザーとして残留契約。


事例③:飲食店1店舗(30歳男性)

  • 月商:120万円

  • 営業年数:2年

  • 売却理由:県外移住による撤退

  • 売却価格:約350万円(設備+営業権+引き継ぎサポート)

→ 常連客やスタッフは継続、店名も維持し、経営者のみ交代。SNSや予約サイトのアカウントも譲渡。


若いうちの売却には“メリット”が多い

メリット 説明
売れるうちに出口が取れる 売上・利益が安定しているタイミングなら高値が付きやすい
次のチャレンジがしやすい 精神的・金銭的余裕を持って再スタート可能
従業員や顧客を守れる 自分が撤退しても、事業が継続する道を残せる
清算よりも得をする可能性がある 廃業ではなく譲渡すれば、売却益+社会的信頼の維持が可能

若手のM&Aにありがちな注意点

「個人依存」が強すぎると売れにくい

→ 顧客・運営・ブランドが“社長の顔”で成り立っている場合、継続性に不安が残るため評価が下がる。

対策:

  • 業務マニュアルや体制を整備する

  • SNSや顧客管理も「組織アカウント」に変更

  • 引き継ぎサポート期間を長めに提示


契約まわりの整備が必要

→ 売上はあるが、取引契約・スタッフ雇用・決済などが曖昧なままではトラブルの元。

対策:

  • 契約書・請求書・会計帳簿を整える

  • 税理士・行政書士に売却前相談を入れる

  • 業務フローを文書化する


「会社を売る=失敗」ではない

かつては、会社を手放すことが「失敗」「ギブアップ」と見なされていた時代もありました。
しかし今やM&Aは、戦略的なステップであり、“起業のゴール”の一つと捉えられています。

むしろ、次のチャンスを得るために資金・信頼・経験を確保できるM&Aは、
若い経営者にとって最も合理的なリスクヘッジ手段といえるかもしれません。


まとめ|30代で会社を売る時代は、すでに来ている

  • 小規模事業でも売れる

  • 起業数年でも売却できる

  • 法人だけでなく、個人事業でも可能

そんな選択肢が、今は現実になっています。

「やめたいけど、廃業はもったいない」
「やりきったけど、次の挑戦に行きたい」

そう思った時が、**“売れるタイミング”**かもしれません。

LINE追加