eスポーツやイベントプロデュースを展開する【GLOE(グローエ)】が、映像制作を主力とする【クラッチ.社】を100%子会社化すると発表した。株式取得は2025年8月末を予定しており、取得価格は非開示だ。
なぜ今、映像制作会社なのか?
GLOEは元々、Z世代を中心としたデジタルネイティブ層にリーチするeスポーツ大会やライブイベントを得意としており、ここ数年でYouTube、Twitch、TikTokなどのプラットフォームとの連携を強めてきた。
その中で、プロモーション映像や配信コンテンツの“質”への要求は年々高まっている。
また、スポンサー企業からも「TVクオリティ」の動画制作を求められる機会が増えており、自社で制作体制を持つことの重要性が増していた。
この背景の中で、テレビ番組からライブDVD、Web動画、アーティストの演出・キャスティングまでを手掛けるクラッチ.社の買収は、単なる“制作リソース強化”にとどまらない意味を持つ。
「地上波」と「ライブ」の融合へ
GLOEは今回の買収により、テレビ番組クラスの演出力・構成力を自社のイベントや配信コンテンツに活用し、イベントの「地上波的グレードアップ」を狙う。
特に注目されるのが、「ライブイベント × eスポーツ × 映像制作」という新しいフォーマットの創出だ。
クラッチ.社のもつライブ演出ノウハウと、GLOEのデジタルプロデュース力を掛け合わせることで、従来の“ゲーム大会”とは一線を画す、総合エンタメイベントの構築が見込まれている。
キャスティング&マネジメント機能にも注目
クラッチ.社は映像制作だけでなく、タレント・アーティストのマネジメントやキャスティング業務も行っており、これによりGLOEは「コンテンツ企画 → 制作 →出演者アサイン」までを一気通貫で行える体制を手に入れたことになる。
つまり、これまで外部に頼っていた部分を内製化することで、スピード感とコスト競争力を両立できる“フルスタック型メディアプロデュース企業”へと進化を遂げようとしているのだ。
今後の展望──GLOEが描く“総合エンタメ商社化”
GLOEは今回の買収を皮切りに、単なるeスポーツ会社から「エンターテインメントを総合的にプロデュースする商社」への進化を加速させる構えだ。
映像・キャスティング・イベント・配信という複数のレイヤーを自社で完結できることは、IPビジネスやアライアンスの交渉力にも直結する。
今後は、GLOEによる新規IPの開発や、クラッチ.社が手がけてきたTVコンテンツの“リバイバル×配信”企画なども期待される。
M&Aによってエンタメ業界の垣根が溶けつつあるいま、GLOEの一手は“映像制作の買収”というより、
「未来のライブ・イベント体験そのものを買った」と言えるかもしれない。