2025年7月第3週、業界再編の動きが相次いで発表された。外食、再生可能エネルギー、スポーツ用品と一見無関係な業界で起きた3件の取引には、それぞれに「次の成長」に向けた共通の狙いが見える。
【外食】フーデックスHD、焼鳥「串八珍」など50店舗超を展開する豊創フーズを買収
飲食多業態を手がけるフーデックスホールディングスが、焼鳥チェーン「串八珍」などを展開する豊創フーズを買収した。買収元はベーシック・キャピタル・マネジメントが運用するファンド。
この買収の狙いは、既存ブランドとの業態シナジーの獲得だ。とくに「池袋屯ちん」「かぶら屋」など既に高いブランド浸透度を持つフーデックスが、“昭和居酒屋”回帰ブームの波に乗る形で焼鳥業態を強化するのは合理的判断といえる。
飲食業界では、店舗網拡大だけでなく「業態ポートフォリオの強化」が評価されやすく、今回の買収はその典型例となった。
【再エネ】シーラHD、寿社から太陽光関連事業を買収 建設ノウハウを取り込み中部地盤を強化
不動産から再エネまで手がけるシーラホールディングスが、子会社シーラソーラーを通じて寿社の太陽光事業を121百万円で譲受することを決定した。
今回の取引では、「土地仕入れ→施工→運用→保守」までの一貫体制を持つシーラソーラーが、建築・土木系の寿社から“施工ノウハウ”を獲得する構図となる。つまり、単なる販売チャネル拡大ではなく、施工力の底上げを目的としたインハウス強化策だ。
不動産からエネルギーへという多角化を進める中で、「施工受注を逃さない現場力」を得るための買収といえる。
【スポーツ用品】住友ゴム、「ダンロップ ソフトテニスボール」製造・販売を内外ゴムに業務移管
住友ゴム工業は、ブランド監修の下でOEM提供してきた「ダンロップ ソフトテニスボール」の製造・販売事業を持分法適用関連会社・内外ゴムに業務移管すると発表した(2026年1月付)。
注目すべきは、今回の移管が単なる業務整理ではなく、市場密着型の販売体制強化を狙った布石である点だ。内外ゴムは、ソフトボール分野での販路・実績があり、その知見をソフトテニス市場に展開する狙いがある。
また、OEMから完全移管への移行により、製品開発〜販売の意思決定スピードの向上も期待される。こうした“半グループ外注”の脱却は、昨今のスポーツ用品業界で増えつつある。
総括:「成長の地盤」を固める、静かな三手
3件に共通するのは、「売上の最大化」よりも“収益性・地盤強化”にフォーカスした意思決定だ。業態ポートフォリオの再編、施工領域の内製化、販売ネットワークの最適化──いずれも、外部リソースを取り込みながら、企業体質の強化を狙っている。
M&Aは“成長のための選択肢”として語られることが多いが、今週の取引群はむしろ「足元固め」の手段としてのM&A・業務移管だったといえる。