2025年7月22日、SaaS企業のrakumo(東証グロース:4060)が、人材紹介会社向けアライアンスサービスなどを手がける株式会社エージェントシェアの全株式を取得し、完全子会社化することを発表した。株式譲渡実行日は2025年8月1日を予定しており、買収額は約6.3億円。
エージェントシェアは、「AGENT SHARE」などHR領域に特化した複数のITプロダクトを展開しており、スタートアップ~中堅企業を中心に急成長してきたベンチャーだ。
なぜ今、rakumoはHR領域を強化するのか?
rakumoはGoogle Workspaceと連携した業務効率化SaaSで知られ、グループウェアのプロとして堅調に成長を続けてきた。しかし、ここ数年のSaaS市場においては「既存業務の効率化」から「人的資本の活用」へとニーズがシフトしており、HR領域は再び注目のフロンティアとなっている。
そんな中での今回の買収は、既存サービスとの“自然な接続”を可能にするM&Aだ。rakumoにとっては、自社の開発力と既存顧客基盤を生かし、エージェントシェアのHRプロダクトを拡充・再設計できるチャンス。一方のエージェントシェアにとっては、信用力や販路の面でrakumoのインフラを活用し、さらなるスケールアップを狙えるという、相思相愛の提携となった。
買収のポイント
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買収額:6.3億円(株式取得:6.29億+アドバイザリー費用)
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取得株式数:1,160株(100%取得)
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買収スキーム:株式譲渡
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実行日:2025年8月1日(予定)
今後の展開:クロスセルと新領域進出の起爆剤に
rakumoは今回の買収によって、以下の展開を見据えている。
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エージェントシェアの製品群のUI/UX改善、機能強化
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既存SaaS群とのシームレスな統合
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共通顧客へのクロスセル・アップセル
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HR領域における新規プロダクト開発
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人材業界へのチャネル強化による新市場の開拓
特に「複数のSaaSを“横串”で束ねる」ことに長けたrakumoにとって、HR領域での製品開発ノウハウを持つエージェントシェアの獲得は、今後のM&A戦略の布石にもなるだろう。
編集部の視点:SaaS企業の次なる成長戦略
HR領域は、景気に左右されやすい一方で、プロダクトの“中毒性”が高いのが特徴。ユーザーが一度導入すれば継続率が高く、収益の安定化につながる。この特性は、ストック型ビジネスを重視するSaaS企業にとって非常に魅力的だ。
また、エージェントシェアは単なる人材紹介支援ではなく、マッチングやアライアンス支援といった「プラットフォーム志向」が強い。今後の事業展開次第では、SaaS×人材領域の“第二のカオナビ”を目指す動きもあるかもしれない。
M&Aマガジン 編集部よりコメント:
SaaS企業にとって「HR Tech」分野は新たな成長ドライバーとして定着しつつあります。今回のrakumoのM&Aは、単なるプロダクト追加ではなく、既存資産との相乗効果を見据えた“戦略的な買収”。BtoB SaaS企業のM&A戦略として、非常に示唆に富む事例と言えるでしょう。