【特集】エンタメ×テックで進むM&Aの波──「共創」と「体験価値」がカギに

2025年に入り、エンターテインメント領域とテクノロジー領域のクロスオーバーを象徴するようなM&Aが相次いで発表された。

吉本興業HD×バルス:笑いとVTuberの融合へ

吉本興業ホールディングスは、XRライブ制作・VTuberプラットフォーム「SPWN」を運営するバルスを買収。タレントとのコラボアニメやVTuberによる地域創生など、「芸人×バーチャル」の未来を描く。

かつて“舞台中心”だった吉本が、XR・VTuberという次世代メディアへ本格進出するのは業界構造が大きく変わる兆しとも言える。

rakumo×エージェントシェア:HRテックの地盤拡大

ITツール開発を手がけるrakumoが、人材紹介会社向けSaaSを提供するエージェントシェアを買収。人材業界の多様なプレイヤーをテクノロジーで横断的につなぐ「プラットフォーマー構想」が見え隠れする。

クロスセル可能な製品群を強化し、HR領域での“ワンストップSaaS”の実現を目指す構えだ。

GENDA×映画.com:プロモーションの垂直統合

アミューズメント企業GENDAは、映画メディア最大手の「映画.com」を買収。映画配給(ギャガ)・宣伝(映画.com)・商品化(フクヤ)といったバリューチェーンを一気通貫で保有することにより、コンテンツの“収益最大化エンジン”を構築した。

映画メディアが単なる「情報提供」から「販促・収益導線」の中核へと再定義される象徴的な事例となった。


共通するキーワードは「体験の統合」

これらのM&Aに共通するのは、「デジタル体験の最適化」と「自社コンテンツの展開力強化」だ。
もはや単一事業だけでは収益性・競争力に限界がある時代。コンテンツホルダーは流通と販促を、テック企業は接点と体験価値を求め、M&Aによって“体験の一気通貫”を目指している。

2025年後半も、エンタメ×テックを軸にした再編はさらに加速するだろう。