タイヤから見える再編の本質──宇佐美鉱油がフジ・コーポレーションを完全子会社化へ

2025年7月22日、カー用品大手のフジ・コーポレーション(東証プライム上場)に対する宇佐美鉱油の公開買付け(TOB)が成立した。7月29日から決済が開始され、フジ・コーポレーションは上場廃止の見込みとなっている。

“給油所からカーライフの統合サービス”へ

宇佐美鉱油といえば、全国で約500カ所以上のサービスステーションを展開し、トラックドライバーから一般顧客までをカバーするガソリンスタンドの老舗だ。その彼らが、ホイール・タイヤ販売に特化したフジ・コーポレーションを傘下に収める背景には、「カーライフ領域の垂直統合」という明確な戦略がある。

燃料販売だけでなく、メンテナンス、用品販売、リース、中古車なども含めた“車まわりのトータルサポート”体制を作る動きが加速している。

非上場化の意味──スピーディな意思決定と統合強化

今回のTOBはフジ・コーポレーションの上場廃止を前提とした「非上場化」案件。これにより、上場企業特有のガバナンス制約から解放され、宇佐美グループとのシステム統合・サービス統合・人材交流などのスピードが一気に高まる。

「ガソリンスタンド×カー用品」という一見シンプルな構図だが、物流・EC・店舗網を統合することで、地方展開・法人営業・DX化の推進など、実は多層的なシナジーが期待される。


カーアフターマーケットの“サブスク化”に向けて

今後、EV化・シェアリング・定額サービスの台頭により、自動車ビジネスは「保有」から「利用」へと大きく舵を切る。

その中で、宇佐美鉱油×フジ・コーポレーションの連携は、「物販×サービス×データ」の融合によって、次世代型の“カーライフ・プラットフォーム”を築く大きな布石となりうる。

地方を拠点に持つ企業同士のM&Aが、全国規模のサービス革新へとつながる──2025年後半、カーアフターマーケットは一層の再編フェーズに入ったと言えるだろう。