【M&Aトレンド速報】太平洋工業がMBOで上場廃止へ――自動車業界の激変に備える「非公開化」という選択

2025年7月25日、太平洋工業株式会社(7250)がマネジメント・バイアウト(MBO)の実施を発表し、上場廃止に向けたプロセスに入った。買収主体は、代表取締役社長が全株式を保有する株式会社COREで、TOBによる株式取得が行われる。

株主構成を一新し、迅速な意思決定を目指す

本件は、太平洋工業の経営陣が主導するMBOであり、買収後の非公開化を通じて「株主のリスク負担を軽減しつつ、経営判断を迅速化」する狙いがある。自動車業界は電動化・CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)への対応が急務となっており、公開企業のままでは大胆な舵取りが難しいと判断したとみられる。

TOB概要

項目 内容
TOB実施期間 2025年7月28日~2025年9月8日(30営業日)
買付価格 普通株式1株につき2,050円
買付予定株数 最大:55,209,117株(下限:35,841,900株)
買付者 株式会社CORE(SPC)

上場廃止は、所定のTOB成立条件を満たした後、所管取引所の手続きを経て正式に決定される予定。

業界全体に広がる「非公開化」の波

昨今、自動車・製造業界では、上場維持コストや株主対応の煩雑さから非公開化を選ぶ企業が増加している。2024年には部品メーカー数社が同様にMBOを実施しており、「スピード経営のための上場廃止」は今や珍しくない選択肢だ。

編集部コメント

「ESGや株主還元に配慮しながらも、業界変革に素早く対応するには“身軽さ”が求められる時代。MBOは、経営者にとって“最後の切り札”ではなく、“次の勝負に備える戦略”になりつつある」と語るのは、M&Aアナリストの山田氏。

今後も、日本の製造業を中心にMBO・TOBを活用した経営再編の動きは加速する可能性が高い。